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アンダーグラウンド / 村上春樹

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1.5㎝以上ある厚みの本を目の前にすると、怖気付いていた。内容の前に文字の大きさと特に厚みが気になってしまう。本を読むことを趣味ですと言えるようなった後も、はやりこの部分は変なこだわりとなっていた。

2018年に入ってから、米原万里さんの書籍にのめり込む(尊敬の念をもって「さん」と敬称する)。生前の作品や没後に再編集されたものを20冊近く読みあさった。読めまば読むほど、もっと読みたいという気持ちが先走る。一時期ちょっとしたロシア・ソ連かぶれな人間になってしまう。

とは言え、そろそろ違う雰囲気の本も読みたいなと思っていたころ、ずっと以前から気になっていた一冊の本が頭に浮かぶ。村上春樹氏の「アンダーグラウンド」文庫本で厚さ3㎝もある大作。単行本だとさらに分厚いはず。厚みだけで倦厭していたが、実は内容にはとても興味があり読みたいと思っていた。いや、「読まなくてはいけない」とずっと後悔していた。

1995年は1月に阪神淡路大震災が発生した年。当時高校生だった私は学校から戻り、テレビで初めてその大惨事を目にした。すべてが失われることへの絶望。日本中が不安な気持ちに包まれる中、3月20日を迎える。地下鉄サリン事件が発生。

アンダーグラウンド」では、実際の被害者の方々から伺った話をもとに、その時それぞれの場で何が起きて誰が何をしたのかが克明に綴られている。お一人おひとりの人生が交差し、想像を絶する状況が連なっていく。

ちょうど中盤ぐらいを読んでいたころだった。この大惨事に関わった人たちへの刑が執行されたのは。偶然というにはあまりにも恐ろしい。ふと、この本を読む意味を理解したように感じた。「この大事件の『真実』を少しでも知りたい」学生だった事件当時、何も気にせずにただ平凡に過ごしていた自分の鈍感さを恥じるばかりである。

この本の最後に、村上氏はこの事件についてのご自身の考えを記している。その中の5項目目に「私は何をすればいいのか?そして感応力」と書かれてある。一大事が起きた時、私たちはただただ狼狽えてしまう。まるで、今の日本や世界のようである。

さまざまな立場があるとは思うが、如何なる問題であっても先を見越して想像することはとても大切だと思う。先を見据えることにより心に余裕が生まれる。この部分が今欠如しているのではないだろうか。そして情報の大海原の中から冷静にかつ適切に情報を読み取り収集し分析する。その根底には、心で深く感じ取り行動するという感応力があるのだろう。心のアンテナがいつもぴかぴかであることが、私たちには求められていると感じる。