取材・執筆・推敲 書く人の教科書 / 古賀史健
3月に偶然参加したオンラインライブセミナー。
講師は古賀史健さんだった。
文章を書くこと。
こうやって毎日にしていることなのに、その営みについて真っ向から捉え考えたことがなかったことに気づいた。
文章を書くこととは、手紙をもらって返事を返すようなもの。
つまり、経験したことに、感謝をもって感想を書くこと。
これがライターの仕事、とのこと。
心に残る言葉だったので、自分の理解が間違っていないかを確認するために、さらに文章を書くことを深化させて考えてみたいと思い、購入。
楽しみの反面、山積みの未読の書籍を見ていると、申し訳なくなってしまう。
誰だろう?積読という読書法を言い出したのは。
全然読んだ気にはならない。
ただただ、ずっしりとした重い気持ちになる。
この本だけは、その本の山には入山させたくない。
동네서점 / 다구치 미키토
今日3月11日は東日本大震災からちょうど10年。
先日震災を題材にしたドラマを観ました。本屋を営んでいた夫婦。夫と店を津波で失ってしまう話でした。ふと思い出したのがこの本です。出版不況の中、大震災に見舞われながら、本と本屋に愛情を注ぐ「まちの本屋」の話。
韓国語版の表紙には「本と人が出会う場所 まちの本屋」とあり、副題には「書店員が探す本の未来、本屋の希望」と表現してあります。
未来と希望。
コロナ禍にある現在において、こころが大きく、ぐーんと背伸びできそう。
それぐらい清々しい言葉ですね。
ちなみにそれから数年後、本当に偶然なことですが、著者の田口さんのトークイベントがあり、直接お目にかかりこの本にサインをしていただきました。韓国語版を手元に出したときはちょっと驚かれていました。確かによく考えてみれば、日本の作品を原作ではなく韓国語版で読むというのも、ちょっとおかしな話ですよね。
知識よりも、想像力。そしてその想像力を支えるのは、きっと経験。
あの日に経験したこと、思いを育んでいくこと。
それが想像力に生まれ変わるのだろうなと考えます。
なんだか本と本屋が急に恋しくなってきました。
またこの本に浸ってみようかな。
Inu de France 犬・ド・フランス / 田中 淳
私はまったくFacebookを使わない。正確には、使わなくなってしまった。ずっと以前は知り合った人と連絡先交換の手段として多用。現在は数人の友人との連絡およびニュースフィードを眺める程度。
今回紹介する本はそのニュースフィードの広告で見かけた一冊である。
「Inu de France 犬・ド・フランス」
フランス各地を旅しながらわんちゃんがいる風景を写真に収め、その出会いのエピソードを軽やかにつづっている。物言わぬわんちゃんたちが飼い主と会話をしているかのような雰囲気。まるで私がまだ訪れたことのないフランスの街並みに気持ちが溶け込んでいくかのようである。
作者の田中さんは子どもの頃からわんちゃんを飼っていたようで、その擬人化っぷりが容赦ない。犬の人生ならぬ「犬生」、犬の数ならぬ「犬口」そして飼い主と「二人」と表記。わんちゃんも一人扱いということ。またフランスの観光地というよりもジモッティー(地元の人)の息づかいが感じられる場所を選び訪れている。その方がフランスで生活しているわんちゃんたちがより生き生きとしてくるからだろうか。
わんちゃんはにゃんこ先生とはちがう。人に対して、特に飼い主に対しては従順である。そして、わんちゃんの人生つまり「犬生」は概ね飼い主の住んでいる場所や生活習慣に左右される。けれど、わんちゃんたちはそのことを特段気にしていないように見える。この本の中で紹介されている多くのわんちゃんたちはそれぞれ境遇はことなるが、みな幸せそうである。わんちゃんにとって、人にとって、幸せとは一体何を意味するのだろうか。この本を読み終えた時、ふとそんな問いかけを自分自身にしてみたくなる。
副題にある「犬のいる風景と出会う旅」を味わうのは、コロナ禍の現在、しばらくおあずけだろう。落ち着いたらぜひフランスへ旅立ってみたいものだ。それまではこの本と今年1月に初めて訪れた台湾の写真を見ながら、空想することにしよう。